荒井恵子の図録から

こんにちは。

とてもよいお天気ですね。

今日は、荒井恵子さんの図録をご紹介いたします。

これは2009年に作られたものです。

この中で紹介されている作品は2003~2009年のものの一部。

この作品は2003年の作品ですが、
縦が162センチある大きなもの。

大きいと言えば・・・
今年の夏、
金沢21世紀美術館での展示風景です。
大きい!

この図録の中で
美術評論家のワシオトシヒコさんが
荒井さんに寄せられた文章をご紹介いたします。

“墨のカラリスト” ―荒井恵子

過日、荒井恵子のアトリエを訪ねた。
2階から見下ろすと、
閑静な住宅街を縫うように、ゆったりと川が流れている。

夕暮れへ向かうにつれ、だんだん家々の輪郭が霞み、
やがて川面だけがぼおっと白く浮かぶに違いない。
とりわけ陽春には、川面に無数の桜の花びらがたゆたい、
それはそれは陶然とした光景となるらしい。

「真の間の川」を意味するこの真間川という名にも心惹かれる。
真の間とは、いったい何を意味するのだろう。
もしかしたら真と真の間には、微かに虚が息づき、
真と虚が渾然一体となって溶け込み、
その広がりこそが創造空間と化すのかもしれない。

造形性豊かな荒井恵子の墨表現は、
いわばそのような創造空間への自身を解き放ち、
あるいは自己構築しているように思われる。

水が澄んでいても、内面が劇しく思い惑って揺れる。
気配を封じ込めても、ときどき水は声を荒げる。
水には、どうにもならない感情があるのではないか。
水とはもちろん水そのものであると同時に、
水に自在にコントロールされる墨をも指す。

荒井恵子の墨の幅の広さ。

とても五彩どころではなく、はるかに多彩を内包する。
彼女ほど変幻自在な“墨のカラリスト”と称讃するにふさわしい
現代の墨表現作家は、ほかにはいないのではなかろうか。
水を媒体にした墨の淡中濃のグラデーション作用を観て、我々が感応するのは、
まさしくあの粘っこい、
油彩をイメージさせる赤、黄、青、緑といった原色系なのである。
それこそが荒井恵子の造形性豊かな墨表現の際立つ特徴で、
その特徴にこそ、世界へはばたく彼女の明日が約束されている。

真間川は、今日もゆったりと流れている。
荒井恵子の体の中にも、また。

荒井さんの墨の表現の底知れない可能性を
今後も期待し見守りたいと思います。

がんばれ、アライケイコ!!!

では。

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